本山ゆかり

Call Me by the Name

Upcoming
2024年9月20日(金)- 10月5日(土)
12:00 - 19:00 日・月・祝 定休

Closing reception:10月5日(土)18:00-19:00

【トークイベント】
本山ゆかり x 福尾匠(哲学者・批評家)
日時:10月5日(土) 16:30-18:00
場所:Yutaka Kikutake Gallery
定員:20名
お申込みはこちらのフォームよりお願いします。

 

Yutaka Kikutake Galleryでは9月20日(金)から10月5日(土)まで、本山ゆかりによる個展「Call Me by the Name」を開催します。初めて発表される水彩紙に色鉛筆の実践、および「Ghost in the Cloth」シリーズより最新作群を展示します。

 

透明アクリル板を媒体に地と図を反転させた図像を描く「画用紙」、また木板に数字を彫刻する「Plate」など、絵画の成立条件を考察し、鑑賞行為に関わる諸要素を分解・再構築する手法で制作に向き合ってきた本山ゆかり。彼女の絵画的実践の可能性は、キャンバスという標準的な支持体を疑問視する態度からも展開を遂げて来ました。本展を構成する二つの作品のうち「Ghost in the Cloth」シリーズは、色面という役割をもたせた布という媒体に、静物のイメージがよれやしわを含んだ物質として具現化されることを意図した作品です。本シリーズの発端は、それまで描くことを避けて来た「美しさ」との対峙だった、と本山はいいます。正に美を体現する「花」、あるいは「ナイフ」といった、いずれも鑑賞者に強い印象や、固定化された概念を想起させるいくつかのモチーフを、新作においても取り上げています。それらのイメージが背負わされた役割は、布という素材の特性上にキルティングを施すことによって生じた影が、色面を横断しながら図像の構成を担わされていることと呼応関係にあることを、見てとることも可能でしょう。さらに、本作が色面の「境界」を強調し印象付けるとしたならば、水彩紙の実践は、それとは正反対の態度によって裏付けられた、もうひとつの「境界」への意識にフォーカスしたものといえます。

 

水彩紙に色鉛筆で、4x4 のマス目のような柄が、曖昧な境目で描かれているのが見えます。各作品は、異なった濃淡で同じ図柄が表現され、ナンバリングがされています。色面の対比が鮮やかな「Ghost in the Cloth」シリーズと組み合わされた形で展示される本作には、ものごとの理解に際し、それらを明確に切り分けざるを得ないことへの内省を含む、作家の態度が表明されているようです。また、淡い筆跡が特徴的な本作の体験が、デジタルデータ上では難しく、鑑賞者に作品とのリアルな対峙と観察を条件づけるという側面は、絵画の成立および受容についての彼女の鋭敏な問題意識が現れた結果ともいえるでしょう。「イメージに身体を与える」と本山が呼ぶ実践の積み重ねの先に、その視点と内的態度を再評価するジェスチュアとしての新たな試みが立ち現れています。

 

本展は、これまでの本山の作品、とりわけ「Ghost in the Cloth」シリーズを改めて評価し、さらに彼女の取り組む新たな試みを発表する機会となります。ドウールーズ研究者である福尾匠氏の新刊書籍「非美学」の装丁に「Ghost in the Cloth」シリーズが使用されるなど、複製イメージとなって頒布される自身の作品を目の当たりにするのは、本展のひとつの動機づけになったといいます。実践と考察を繰り返し、さらなる発展を目指す、本山ゆかりの近年の成果にぜひご注目ください。