Yutaka Kikutake Gallery Kyobashiでは、香港を拠点に活動するトレヴァー・ヤンと、東京を拠点にする毛利悠子による二人展を開催します。それぞれが第60回ヴェネチア・ビエンナーレの日本代表、香港代表としてパヴィリオンの展示を手がけ、東アジアを代表するアーティストとして活動の場を広げるヤンと毛利。コスモポリタン的な感性を同じくするふたりは本展に向け、ヴェネチアと東京での滞在を通し親交を深めました。その間に交わされた会話や目にした情景が、日常における些細な事象を掬い上げる共通のプロセスの起点となり、本展での作品に反映されています。
トレヴァー・ヤンは1988年生まれ。個人的な経験と社会への鋭い観察を織り交ぜ、写真作品から大規模なインスタレーションまで多岐にわたり制作を続けてきました。近年取り組むミクストメディア作品においては、オブジェや植物を美的要素として機能させながら、閉じた環境や社会的規範が私たちの感情や行動に及ぼす作用、あらゆる生き物の間におけるパワーダイナミクスを探求しています。植物や水生生物を人間関係における感情の機微のメタファーとして用いた作品に代表されるように、ユーモアとアイロニーを交えた繊細な表現が特徴です。 2024年には第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展に香港代表として選出されたほか、第24回シドニー・ビエンナーレ(オーストラリア)、ラホール・ビエンナーレ2024(パキスタン)にも参加。2023年にはロンドン、ブリュッセル、ペナンで個展を開催し、国際的に注目を集めています。
毛利悠子は1980年生まれ。既製品、ファウンド・オブジェ、自作の装置を組み合わせて、展示環境などの諸条件によって変化していく事象を生成するインスタレーション作品を発表してきました。電子回路によって生み出されるエネルギーが、作品のコンポジションを通じて乱反射することで、日々生起する予測できない諸現象やより大きな世界構造に潜在する複雑性の断片を、視覚や聴覚、またときには触覚を通じて鑑賞者に伝えます。2024年には第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展に日本代表として選出されました。2025年は、2月9日まで開催中のアーティゾン美術館での個展「ピュシスについて」のほか、9月からはピレリ・ハンガービコッカ(ミラノ)での個展を控えています。
やまびこが音を反響するように、ヴェネチアと東京、過去と現在の間で呼応し合うふたりの新たな実践とコラボレーションの成果をぜひご高覧ください。