Yutaka Kikutake Galleryでは、2月1日(金)から3月9日(土)まで、小林エリカの個展「野鳥の森 1F」を開催いたします。Yutaka Kikutake Galleryでの初個展となる本展は、30点に及ぶペインティング作品「野鳥の森」を含めた、新作シリーズを発表いたします。
小林エリカは、東京電力福島第一原子力発電所を訪れ、かつてその構内に存在した植物たちの植生に着目しました。現在、汚染水タンク置き場になっているその広大な土地は、木々や草花が生い茂り鳥の声が聞こえる「野鳥の森」と呼ばれる場所だったと言います。原子力発電所の事故後、木々は伐採され、放射線量を抑えるために、地面一帯は銀色のモルタルに覆われたエリアになっています。小林は、過去の時間と放射性物質の存在を重ね合わせ、目には見えないものたちへの想像力を喚起させる作品を制作しました。
これまで小林は小説家やマンガ家として作品を発表し高い評価を得るかたわら、ドローイングやシルクスクリーン、写真、鏡、光や音など多様なメディアを用いた作品を制作してきました。2011年の東日本大震災以前から、原子力エネルギーのリサーチを多角的に行い、自身の家族の個人史とも重ね合わせながら、資料性の高さと豊かな詩情に裏打ちされた作品を発表。六本木クロッシング2016展「僕の身体、あなたの声」では、ドローイング、ネオン、音からなるインスタレーション作品「日出ずる(Sunrise)」(2016年)に纏めあげました。今回発表される新作たちは、福島の森にかつて存在していた花々の姿を想起させるようなペインティングとともに、原子力エネルギーにまつわるより繊細な記憶に着目した作品となります。
小林エリカは、1978年東京都生まれ。2007年-2008年、アジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘でアメリカ、ニューヨークに滞在。現在、東京にて活動。
目に見えない物、時間や歴史、家族や記憶、場所の痕跡から着想を得た作品を手掛ける。2014年には小説「マダム・キュリーと朝食を」(集英社)で、第27回三島由紀夫賞・第151回芥川龍之介賞にノミネートされる。同時に、それらの小説に散りばめられたフィクションとドキュメンタリーの要素が、私的なナラティブと社会のリアリティーの狭間で行き来する光景を追体験するようなインスタレーション作品を国内外で発表する。他の著書には、短編小説集「彼女は鏡の中を覗きこむ」(集英社)、父とアンネ・フランクの日記をモチーフにした「親愛なるキティーたちへ」、放射能の科学史を辿るコミック「光の子ども1.2」(共にリトルモア)、作品集「忘れられないの」(青土社)などがある。
近年の主な展覧会に「六本木クロッシング2016: 僕の身体、あなたの声」(2016年、森美術館、東京)、「ここに棲む ― 地域社会へのまなざし」(2015年、アーツ前橋)、The Futureとの「Your Dear Kitty, the book of Memories」(2015年、Lloyd Hotel and JCC、アムステルダム)、 「The Radiants」(2015年、Bortolami Gallery、ニューヨーク)、「彼女は鏡の中を覗きこむ / 庭」(2014年、GALLERY 360°、東京)