SNSが主要なメディアの一部となった現在、個々のアイデンティティはセルフィーや日常的な経験をシェアすることで構築され、そこで個人の社会上のステータスが定義されます。そこではパーソナリティのカルト化が極度に進行し、アーティストも、プレゼンテーションやセルフイメージを用意周到に計算し、その結果、アーティストがブランドととなり、作品がその商品として流通します。
本展は、写真というメディアを通じこのような状況を考察する場となります。展示される作品は「H」という匿名の作家に帰属します。Hとは、ある個人、或いは集団かもしれない存在が名前やアイデンティティを秘匿するための仮象の記号であり、ここでは匿名性を保つために、性別、年齢、国籍などの情報があらかじめ排除されています。このプロジェクトは、作家の個人情報や作品の背景を語ること/語らないことが写真を作品として評価するプロセスにどのように関係し、作品の背後に潜む作家のパーソナリティやカリスマ、思想、私生活などが作品においてどう機能するかを考察する実験の場です。そしてさらに、これは1回限りのプロジェクトではなく、Hというあらかじめ失われた「作家」の長期的なプロジェクトのひとつとなります。本展以降、H のすべての活動はアイヴァン・ヴァルタニアンを通じて発表され, アイヴァン・ヴァルタニアンが代理人として「作家」のデマンドを実行します。
本展のタイトルは「H (Action 1)」という題名です。「アクション」というニュートラルな語彙によって展覧会そのものが一つの出来事として提示されます。本展ではカラープリントの作品を中心に発表されます。
同時に、Action 2として、本展で発表されるカラー作品とは全く異なるスタイルで構成された写真集「ISBN 978-4-86541-063-1 C0072」が赤々舎より発行されます。そして、この本も同様にHという個性を欠いた記号以外には作家の情報は一切記載されず、作家の意図はあらかじめ失われた状態で読者に提示されます。本展では白黒のL判プリントとして同時に発表されます。
・関連トークイベント「僕はHではない」のご案内
5月27日(土)15時より、ホンマ・タカシ氏とアイヴァン・ヴァルタニアン氏によるトークイベント
「僕はHではない」を開催します。
会場:Yutaka Kikutake Gallery 定員:23名(先着順)
参加申し込み用emailアドレス: info@ykggallery.com
件名に「僕はHではないトークイベント」とご記入の上、お名前・参加人数・連絡先電話番号を表記の上メールにてお申し込みください。申し込み受付の返信メールをもって予約確定とさせていただきます。(5月1日から5月9日までは休廊日となります。5月10日以降にお返事いたしますので、予めご了承ください。)
・写真集「ISBN978-4-86541-063-1 C0072」のご案内
著者: H A4、184ページ、並製 袋綴じ
定価 5400円 赤々舎発行