Nerhol

Household Vestiges

Current
六本木
2025年2月1日(土)- 3月15日(土)
12:00 - 19:00 日・月・祝 定休

Opening reception:2月1日(土)17:00-19:00

田中義久(1980–)と飯田竜太(1981–)により2007年に結成されたアーティストデュオNerhol(ネルホル)。人物の連続写真の束を彫刻する制作手法を基軸に、近年は帰化植物や珪化木、記録映像にまで対象を広げ、時間と空間についての独自の探究を続けて来ました。植物の「移動」といった観点を巡る取り組みや、フィールドワークを経たフィジカルな素材の制作など、内包された時間軸を掘り起こすのみならず、Nerholの実践は、社会学や歴史、文化人類学といった複数の領域へと深化を遂げています。「Household Vestiges(家の痕跡)」と題された本展では、これまでの二人の制作活動を礎に、家や世帯といった身近な構成単位から物事を切り取り、時間の積層はもとより、その背景に潜む歴史や時代性など、個々の固有性を超えた関係性の網を見出す作品群を展示します。

 

A3で出力された紙の束が積み重なり、床に置かれています。ある一本の映画をおよそ15000枚の静止画として出力し120cmに及ぶ高さに垂直に積み上げた本作では、横から見るとノイズのような色の集積が浮かび上がり、ある物事を全く別の次元から捉えるという二人の試みを象徴的に示しているようです。ある家に所有される多種多様なもの ― DVD、映画、記録映像、あるいはポストカードなど – は、その構成員の個性の現れであると同時に、背景に広がるより大きな文脈に属しているという見方もできます。家族という小さな枠組みを足掛かりに、極小と極大、偶然と必然といった視点を行き来し、世界へと眼差しを向ける姿勢は、ある家の肖像としての輪郭を逆説的に描き出すことにも繋がりそうです。

加えて本展では2020年頃から現在まで多数の制作を行っている「帰化植物」シリーズからアメリカオニアザミをモチーフに制作された作品や、作家の家で偶然見つかったポストカードに、近年撮影された米松の写真を連ねた新作も展示されます。時と場所の全く違う状況で撮影された二つの松が画面上で繋がっているように見える本作には、数百年単位で行われる植物の移動という視点が結んだ、雄大な時間軸の気配がたちのぼっています。

2022年に発表されて以来、「帰化植物」とともに発展を続ける「珪化木」、和紙という素材を作り出すことから取り組んだCanvas(Nusa)シリーズにも今回新たな展開が見られます。

 

本展は、Nerholの実践をさらに推し進め、その現在地を見渡す機会であるとともに、埼玉県立近代美術館にて今年7月に予定されている彼らの個展の前章でもあります。時間や空間というキーワードを軸に、より大きな視点や文脈に足がかりを求め、発展を続ける彼らの活動の成果と、その新境地をぜひご共有ください。

"Piano sonata 01", 2025

"connecticut", 2025

"Canvas (Oasa)", 2025

"Solanum americanum", 2024

"Cirsium vulgare", 2024