Yutaka Kikutake Galleryでは、4月6日(金)から5月19日(土)まで、向山喜章個展「Maruyulate / Marugalate」を開催いたします。向山はワックスを素材にした作品を通じ、移ろい変わりゆく光を留める方法を長年に渡って探求してきました。また、近年ではキャンバス作品を発表し、光そのものをいかにしてキャンバス上で生成できるかという試みを続けています。本展は、これまで開催してきた「Luminous / Lunar」(2016年)、「Veda / Vendarta」(2017年)の2つの展覧会に続き、光の存在態について、ワックス作品とキャンバス作品の2方向からアプローチをする3部作のひとつを成すものです。
「Luminous / Lunar」においては自然光の淡い存在感(うつろう光の突端部分)を提示する作品を、「Veda / Vendarta」においては光に奥行きを与える闇の存在とともに光の当たり方によって表情を大きく変化させる作品を発表してきましたが、本展では、月輪観―心のなかに月明かりを想い、その光の在り様と自己の存在を重ね合わせる瞑想方法―の体験を起点に据え、遠方から私たちに届けられ、古くから人々の精神、文学や芸術における重要なテーマともなってきた月明かりの様相を捉える新作のキャンバス作品と初期ワックス作品を展示します。
ふたつの満月。月揺れるマルユレエテ。しっとりと廻りだすマルガレエテには、月光と陽光に煌めくキャンバスの光輪がある。わたしにとって色彩とは、マテリアルのことであり、体温やリズムも伴って、上下左右なく、空間を円かに照らす。ワックスの中から、それを支えていた作品芯である木製の本体が現れ、独特な言霊を発した – マルガデプスとマルガランス。それらは天からのメタファーかも知れない。月も陽も、光る身1つは2つからなるという真理を、合掌は知らせる。
向山喜章
向山は、1968年大阪府に生まれ、現在は東京を拠点に活動しています。幼少期を日本有数の密教の伽藍が立ち並ぶ高野山で過ごし、周囲の静謐な環境やそこに存在する仏教美術に触れてきた原体験は、初期より一貫してモチーフとして扱ってきた光という根源的な存在態へと向山を向かわせました。繊細にコントロールされた色彩を素材として扱い、数十回に渡って塗り重ねられ制作される近年のキャンバス作品は、幾様にもその姿を変えながら、歴史、光、人の精神といったキーワードとともに鑑賞者をその作品世界へ誘います。