Yutaka Kikutake Galleryでは、7月8日(土)から9月2日(土)まで、向山喜章個展「Veda / Vendarta」を開催いたします。昨年の個展以来Yutaka Kikutake Galleryで2回目の個展となる本展では、新作キャンバス作品14点に加え、近作のワックスを素材にした作品4点を展示いたします。
わたしの作品は、身体内につつまれた魂に宿る祈りを表しています。その魂の抽象的な光りは変幻自在にその輝きをくり返しながら、生命とともに息づいている不過視のマテリアルである。本展にあたり、ワックスを使用した近作のVedaシリーズと、アクリルメディウムとキャンバスを使用した新作のVendartaシリーズを同空間に展示した。両シリーズはいずれも内包された「深遠な光りのイメージ」である。光と闇は密接不可分であり、共に在ってその光彩、陰影を増すのである。Vendartaは、光と闇のメディウムが幾重にも塗り重なりあって現れた生命の反射板―カオスのマテリアルなのである。天体、そして密教の宇宙観へも通ずる深遠なる暗闇は、魂に祈りを灯すように自然とそこに在るのである。
向山喜章
向山は、1968年大阪府に生まれ、現在は東京を拠点に活動しています。幼少期を日本有数の密教の伽藍が立ち並ぶ高野山で過ごし、周囲の静謐な環境やそこに存在する仏教美術に触れてきた原体験は、初期より一貫してモチーフとして扱ってきた光という根源的な存在態へと向山を向かわせました。昨年の展覧会で新たな試みとして発表されたキャンバス作品のシリーズLunar では、自然光の淡さ(うつろう光の突端部分)を捉え、周囲の空気感とともに変化する作品を作り上げましたが、今回最新作として発表されるシリーズVendartaは、光の背景・奥行である闇を基底に湛えながら光を描くという、より重層的な試みを展開しています。Vendartaと向き合うように展示されるワックスを用いた作品Vedaは、月や星の光のように闇に宿る光の姿を留めており、両者が織り成す光の様相は、現代に溢れる人工的な光とは異なる重要な示唆を含んだものとして私たちの前に立ち表れてきます。