古橋まどか

Body Object Thing Matter

Past
Yutaka Kikutake Gallery
2018年2月24日(土)-3月31日(土)
12:00 - 18:00

オープニング・レセプション:2月24日(土)18:00 - 20:00

Yutaka Kikutake Galleryは、2月24日から古橋まどか個展「Body Object Thing Matter」を開催いたします。 Yutaka Kikutake Galleryでの初個展となる本展では、イタリア、インドネシアで制作された作品群を再構成した新作インスタレーションを展示いたします。

 

英国で建築と美術を学んだ古橋は、極めて日常に近い物に関するリサーチを基軸としたサイトスペシフィックな制作活動を展開してきました。2015年、北部イタリア、ロンバルディア州ブレーシャの街外れにある広大な採石場を訪れたことを契機に古橋は、原料が製品となる製造の過程と、その過程を生み出す労働の力について考察を始めます。

 

二つのフィジカリティ(物質性と身体性)

エネルギーである労働は、実体をもたないエンティティです。しかしながら、原料を製品へと物的に変貌させる先の製造にとどまらず、あらゆる生産において必須である労働は、経済学上原材料の一つとして考えられるなど、物質的な側面を持っています。それから至極当然なことかもしれませんが、労働は人の行為に由来しますので、それ故に身体的な側面を持っています。そこで、実体のないエネルギーを考古学者が遺物から古代の様子を推し量ろうとするように「物・体」として捉えてみたとき、現代についてどのような知識が得られるだろうか、と想像しました。

そこに、ポスト工業化のコンセクエンスが記述されるかもしれない、ということも。

古橋まどか

 

「特定の姿形をもたない身体を捉えること」を意図したという「Raw Material, Goods and Human Body」は、インドネシア、ジョグジャカルタ州の石灰の採石場にて採掘され、中途で加工を終えた石灰石と、石灰のキャストから構成され、物が成り立つ過程自体を展示空間に表出させる試みとなりました。日常の時の流れと空間から集められた物達は、無垢な物質と物質自体が秘める変容の可能性を漂わせ、私たちはその佇まいから、労働の力とその力が起こしうる変化の過程を取り巻く出来事に思いを巡らすことができます。それらはまるで、考古学上の遺物の如く、人々が残した痕跡や記憶を内包しているかのようです。断片的かつ曖昧に象られた身体像を前に、鑑賞者は否応なしに惹きつけられ、不可視なナラティブに耳を澄ませたくなります。そこには、収束地点を設けない、心地良い惑いの空間を感じることができるでしょう。

 

本展での試みを通して、古橋の考察は、産出物すら実体をもたない仮想通貨のマイニングに纏わる天文学的な労働エネルギーへと広がっています。作家の縷々とした探求による最新作を是非この機会にご高覧ください。

 

古橋まどかは、1983年長野県生まれ。2010年AAスクールオブアーキテクチャー インターメディエートスクール修了。2013年ロイヤルカレッジオブアート大学院芸術学科修士課程修了し、現在、同大学院芸術学科博士課程在籍中。近年の主な個展に「Raw Material, Goods and Human Body」ASP(2017年)、「Il Quarto Stato」クンストハレ・ブレーシャ(2015年)、「木偶ノ坊節穴」資生堂ギャラリー、ヤリワールセン・ミカウバーストリート(2014年)がある。

Photo: Kentaro Yokouchi

Photo: Kentaro Yokouchi