Yutaka Kikutake Galleryでは、3月22日(金)から4月27日(土)まで、平川紀道の個展「human property (alien territory)」を開催いたします。
平川はこれまで原始的でありながらも、現代社会のあらゆるテクノロジーを支える術である計算に注目し、コンピュータ・プログラミングによる数理的処理そのものや、その結果を用いたインスタレーション作品を発表してきました。また近年では、Kavli IPMU(カブリ数物連携宇宙研究機構)における滞在制作(2016年)を経て開始した、高次元空間における美をテーマとした映像と音響によるプロジェクト「datum」を展開し、豊田市美術館、札幌国際芸術祭プレイベント、六本木クロッシング2019(森美術館にて2019年5月26日まで開催中)等で発表してきました。「datum」は、空間、色、時間という異なる概念を、それらが統一された高次元空間において対称的に扱うことで、人間が本来は目にすることのない美を見ようとする作品です。映像データの各画素を、空間を表すXとY、色の混合要素R、G、B、フレーム数にあたる時間Tの、6つの数値を空間座標として持つ点として捉え、映像中の全画素を6次元空間に浮かぶ点の集合と考えながら、それに任意の回転を加えることで、色の階調、曲線、それらの時間変化が、互いに変換され、渾然一体となった写像が得られます。普遍性を持った演算がもたらす非実在的なパースペクティブを通じて私たちの美的な解釈に刺激を与える作品と言えるでしょう。
本展は、2015年にICC(新宿)にて発表された、コンピュータ上のあるメモリ領域で処理することのできない数に達しプログラムが破綻するまで,アルファベットの文字列を生成し続けながら,その中に現われる実在する人名がハイライトで表示される作品「knowns」のアップデート版、2017年にポーランドにて発表された4次元空間における球面を2次元に投影した作品「S³」のアップデート版、2013年YCAM(山口情報芸術センター)で制作された、インタビューに答える女性達のポートレートから、特定の人物としてしか実在し得ない「人間」の像に迫ろうとする「unknowns」の最新版、そして、月面の地形データの中から、特定の文字列として読むことのできる部分を探すプロセスから「意味」の意味について考える新作「Find ‘unicorn’s on the far side of the moon」の4つの作品から構成されます。人間が人間であるが故に享受できるものとその外部に絶えず存在する未知の領域との接続のあり方や関係性への関心から導かれる、平川紀道の作品に通底する魅力を最新作とともに紹介する機会となります。
モニターデモ機 提供協力:EIZO株式会社
平川紀道は1982年生まれ。コンピューター・プログラミングを用いた映像音響インスタレーションを中心とした作品群を国内外の美術展、メディア・アート・フェスティバルで発表。アルス・エレクトロニカ2008準グランプリ他受賞多数。池田亮司、大友良英、三上晴子らの作品制作への参加、Typingmonkeysとしてのライブ・パフォーマンスなど、活動は多岐にわたります。作品「datum」にて第22回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。