小左誠一郎

谺せよ、UPO

Past
Yutaka Kikutake Gallery, Tokyo
2018年7月7日(土)-8月4日(土)
12:00 - 18:00

オープニング・レセプション:7月7日(土)18:00 - 20:00

Yutaka Kikutake Galleryは、7月7日(土)から小左誠一郎個展「谺せよ、 UPO」を開催いたします。Yutaka Kikutake Galleryでの初個展となる本展では、新作およそ6点を発表いたします。

 

 

星の光が数百〜数億光年という時空を超えて、俺の両目に到達しているって、誰もがそれをいつの頃からか知っている。絵描きが絵を描いてる内にいつかそれに気づくように。

絵の具も同じなのだろう。

キャンバスの淵で果てることなく、その深遠に途方もなく広がる空白に伸びて、右往左往しながら、いずれどこかに着残し光るって、朧げに感じているのだろう。

 

お互いに、思い通りに転がり込もうが、不本意に手が滑ろうが、一つの絵の矛盾や是非、不思議さなどどうでもいいというような顔をしていよう。ただ俺と絵の具で心ゆくまで閃々としよう。俺は光を観るために、たぶん絵は、光そのもので在るために。

 

その谺する得体の知れない絵の具!

それと一生、途中でさえもそこを選ぶのならば、なんかどうしようもなく面白いと信じよう。そういう存在でお互いいよう。

2018年5月 小左誠一郎

 

2011年以降、小左は、最低限の要素からなる線や色、形をキャンバス全面に規則正しく、繰り返し描く抽象絵画に取り組んできました。純粋化された表現は、絵という平面に空間性を与える水平線や垂直線、曲線や斜線で構成された○△□という根源的なモチーフからなる一方、対峙するキャンバスと対話するかのような反射的ストロークは、作家の息遣いを伝えるようです。恣意的に選択された織の荒いキャンバスは、絵筆のタッチやストロークへの不意な抵抗となり、小左が『試合』と呼ぶ、作家の身体VSキャンバスという生成プロセスを生み出します。あたかもアクション・ペインティングを想起させるその制作過程は、方形の境界線を越えていく光景として、鑑賞者の前に経ち現れるのです。

 

抽象絵画を代表する作家フランク・ステラは、絵画は何かを映し出すスクリーンではなく、ひとつの物体であると考えました。支持体が絵画を規定するのではなく、絵画が支持体を規定する「シェイプド・キャンバス」により、描かれていた形態とキャンバスの形態は等価となり、その間にあった境界線は限りなく曖昧なものとなりました。本展で紹介する新作には、あえて矩形の世界の中でこうした絵と枠を越境していこうとする、むしろその境界線に抗う状況を楽しむ作家の姿勢を感じることができます。小左にとって「急所はどこなのかも解らない四角い怪物」であるキャンバスは、描かれるための土台ではなく、表現のために対峙する、得体の知れない『物体』なのでしょう。

 

「UPO(Unidentified Painting Object=未確認描画物体)」と小左が名付けた作品群は、不可思議でどこか懐かしい光を内包しています。制作者の身体の関わり方、メディウムの在り様までも変容させる作家と絵の具の交信の先には、私たちの視覚を刺激し、平面でありながら漂動するかのような空間が広がっています。偶然性や不随意性、それに反発しながら描こうとする意志が、互いに正面から受け止め、谺しあう時、そこに生まれる作家と絵の予測できない対話とその残響を是非この機会にご高覧ください。

”untitled”, 2018
oil on canvas
130.3×97 cm