「Neue Fruchtige Tanzmusik」
Yutaka Kikutake Galleryでは11月2日(水)から12月3日(土)まで、毛利悠子による弊ギャラリーで初めてとなる個展「Neue Fruchtige Tanzmusik」を開催します。展覧会タイトルは「新しいフルーティなダンスミュージック」を意味するドイツ語です。
本展では、毛利が近年取り組んでいる、フルーツに電極を挿して内部の水分量などを測り、乾燥や腐敗によって生じる抵抗値の変化を音に変換する作品《Decomposition》シリーズで初の試みとなる大規模なオーディオシステムを用いたインスタレーションを中心に、フルーツが腐敗する過程を捉えた写真作品《Neue Fruchtige Tanzmusik (photo)》、また、腐敗の過程を《Decomposition》を通じて記録した録音複製作品(LP)《Neue Fruchtige Tanzmusik (vinyl)》を発表します。
毛利はこれまでも、既製品、ファウンド・オブジェ、自作の装置を組み合わせて、展示環境などの諸条件によって変化していく現象を生成するインスタレーション作品を発表してきました。電子回路によって生み出されるエネルギーが、作品のコンポジションを通じて乱反射することで、日々生起する予測できない諸現象やより大きな世界構造に潜在する複雑性の断片を、視覚や聴覚、またときには触覚や嗅覚を通じて鑑賞者に伝えます。
今回展示される《Decomposition》もまた、フルーツの内部で生じている微細な変化を音に変換し、土や幹との繋がりを断った後も生成変化を続けるフルーツの生命の姿を伝えます。フルーツは西洋絵画においてたびたび描かれる主要なモチーフのひとつであり、絵画のなかで言うなれば永遠の生を与えられてきましたが、本作品はそうしたフルーツをあらためて生死の循環に戻すものでもあります。本作の制作にあたって、だんだんと腐り姿形を変えてゆく死体の様子を描いた仏教絵画「九相図」を作家が参照項としていることも、特筆すべき点として挙げられるでしょう。毛利が敬愛してやまないジョン・ケージやデイヴィッド・テュードアといった先達たちが60年代から実践してきたライヴ・エレクトロニクス(Live electronics)という表現形態を土台にしつつも、死にゆく有機物をメディウムに使用した本作は、リヴィングデッド・エレクトロニクス・インスタレーション(Living dead electronics installation)と呼ぶことができるかもしれません。
作品タイトルのDecompositionは、腐敗や分解という意味を持ち、composition(作曲)に対して否定や離脱の接頭辞「de」が付いた語です。自然生成する作曲法としても成り立つ《Decomposition》は、世界に存在するさまざまな現象、事物がすでにきわめて複雑で流動性に富むものであることを伝えながら、そこに在る美的な要素をすくい上げる装置であると言えるでしょう。“unstable”なものに一貫して関心を持ちつづけ、ズレやノイズを伴いながら絶えず変化するエネルギーの諸相を詳らかにしてゆく毛利悠子の最新作をぜひご覧ください。
【会場】Yutaka Kikutake Gallery (106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 2F)
【会期】2022年11月2日(水)– 12月3日(土) 12:00–19:00 *日・月・祝日 休廊
*写真作品《Neue Fruchtige Tanzmusik (photo)》は、会期中に2回作品の展示替えを行います。詳細につきましては、ギャラリーホームページおよび公式Instagramにて随時情報公開します。
本展に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。
Email: info@ykggallery.com Tel: 03-6447-0500
担当:西塚
■トークイベント開催のご案内
KOTARO NUKAGA で個展「N」を開催中の田村友一郎と毛利悠子による対談を、ゲストに磯谷博史氏を迎えて開催します。
日時:11 月 5 日(土)17:00-18:00
会場:KOTARO NUKAGA ( 東京都港区六本木 6-6-9 2F)
定員:30名(先着順)
参加費:無料
お申し込みはこちらよりお願いします。
■関連イベント開催のご案内
金沢21世紀美術館「オープンまるびぃ2022関連企画 コレクション作家 毛利悠子 特別展示」
毛利悠子による市内循環バスツアー形式の新作《タブレットとマーブルの金沢うためぐり》の企画にあわせ、作品《copula》および《Decomposition》を特別展示します。
会場=金沢21世紀美術館
会期=2022年10月18日(火)〜
料金=無料
お問い合わせ=金沢21世紀美術館交流課 TEL076-220-2811(10:00~18:00 ※月曜を除く)
アーティストについて
毛利悠子は、1980年生まれ。2006年、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科修了。現在は東京を拠点に活動している。
近年の主な個展に「Parade(a Drip, a Drop, the End of the Tale)」(ジャパンハウス サンパウロ、2021年)、「SP. by yuko mohri」(Ginza Sony Park、東京、2020年)、「Voluta」(カムデン・アーツ・センター、ロンドン、2018年)、「毛利悠子:ただし抵抗はあるものとする」(十和田市現代美術館、青森、2018年)があるほか、「第23回シドニー・ビエンナーレ」(シドニー)、「アジア・アート・ビエンナーレ2021」(台中)、「第34回サンパウロ・ビエンナーレ」(サンパウロ)、「グラスゴー・インターナショナル2021」(グラスゴー)、「第9回アジア・パシフィック・トライエニアル」(ブリスベン)、「第14回リヨン・ビエンナーレ」(リヨン)、「ヨコハマトリエンナーレ2014」(神奈川)など国内外の多数の展覧会に参加してきた。
その作品は、東京都現代美術館(東京)、⾦沢21世紀美術館(⽯川)、京都国⽴近代美術館(京都)、クイーンズランド州⽴近代美術館(ブリスベン)、ポンピドゥー・センター(パリ)、M+(⾹港)、アシュモレアン・ミュージアム(オックスフォード)などに収蔵されている。
2015年、アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)のグランティとして渡米。2018年に文化庁文化交流使東アジア文化交流使として中国に滞在。2022年、アンスティチュ・フランセ シテ・アンテルナショナル・デ・ザール2020 ローリエットとして渡仏。2015年に日産アートアワードグランプリ、2016年に神奈川文化賞未来賞、2017年に第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。