Yutaka Kikutake Galleryでは、ロンドン在住のアーティストデュオ、ハナ・クインラン&ロジー・ヘイスティングス、および東京を拠点に活動する小林エリカによるグループ展を開催いたします。
本展は、温泉大作戦の一環として、ハナ・クインラン&ロジー・ヘイスティングが所属するロンドンのギャラリーArcadia Missaをゲストに迎え企画されました。
小林エリカは、これまで目に見えない物、時間や歴史、家族や記憶、場所の痕跡から着想を得た 作品を、小説、漫画、ドローイング、写真、映像、インスタレーションと様々な手法を通じて発表し高い評価を得てきました。 小林は近年、第二次世界大戦中に風船爆弾づくりに動員された女学生たちを描いた音楽朗読劇「女の子たち風船爆弾をつくる Girls, Making Paper Balloon Bombs」の脚本を手がけ、小説「女の子たち風船爆弾をつくる The Paper Balloon Bomb Follies」(文藝春秋)の刊行を前に、本展でも東京宝塚劇場が風船爆弾製造のために使用された歴史から、意図せず戦争に巻き込まれてしまった少女たちをめぐる作品が展示されます。 宝塚歌劇団が戦後初めての公演で披露した「春のをどり」をテーマとしたペインティングは、初舞台生のお披露目として伝統あるロケットダンスを学徒動員を経て生還した団員が踊るシーンが描かれています。初めての試みとして、ペインティングの支持体に作家の祖母から譲り受けた着物と、若い女性を暗示する振袖、なかでも女性の肌に近い襦袢や裏地を用い、ダンスを踊る少女という身体的なテーマと結びつけています。
ハナ・クインラン&ロジー・ヘイスティングスはともに1991年ニューカッスル生まれ。ロンドンを拠点に、映像、ドローイング、インスタレーション、パフォーマンス作品を制作するアーティスト・デュオです。西洋の文脈における LGBTQ カルチャーと社会構造との関係性を探り、美術史やアーカイブを参照することで浮かび上がる諸問題を再解釈しながら、現代の私たちが直面する社会や政治のあり方に疑問を投げかけてきました。 テート・ブリテンで開催された展覧会「Tulips」(2022年)では、フィレンツェのブランカッチ礼拝堂にあるフレスコ画からインスピレーションを得た架空のシーンをストリート写真のアーカイヴを用いて描き出し、公共空間におけるパワーダイナミクス、階級、権威といったテーマに迫りました。本展では、その取り組みの延長であるクィア・ポートレイトシリーズの新作が展示されます。